退屈から抜け出すための映画

観た映画の感想をだらだらと書いているだけのブログです。

映画「大災難 P.T.A」(ネタバレあり)

「大災難 P.T.A」

大災難P.T.A. [DVD]

プリティ・イン・ピンク」「ブレックファスト・クラブ」に続きまたまたジョン・ヒューズ作品ですが、続けて3回観たくらい面白かったです。ティーンエイジャー向け青春映画を撮っていたジョン・ヒューズが家族や子供を描いた作品を撮り始める最初の作品となったのがこの「大災難 P.T.A」。よく、少年少女が出会い恋に落ちる運命的な話を「ボーイ・ミーツ・ガール」などといいますが、この作品は「おっさん・ミーツ・おっさん」だなと思いました。もちろん2人が恋に落ちるわけではないですが、おっさんがおっさんに出会い様々な災難を共に経験することによって2人の心の距離が徐々に縮まっていく様子を描いた作品になっています。それって面白いのか?と疑問に思うかもしれませんが、コメディでもありロードムービーでもある(バディ・ムービーと書かれているのも見かけましたがちょっと違う気がする)本作は笑って泣けて共感できて面白いです。普段映画をあまり観ない人にオススメの面白い映画を教えてと言われたら、まずこの作品をお勧めします

ちなみにエマ・ストーンに73の質問 LAの自宅と愛犬、ブリトニー・スピアーズのものまね|73 Questionstという動画で、エマ・ストーンが「好きなストーリー展開は?」という質問に「大災難 P.T.A」をあげていました。

作品について

公開:1987年/アメリカ

原題:Planes, Trains and Automobiles

監督・脚本・製作:ジョン・ヒューズ

出演:スティーヴ・マーティン、ジョン・キャンディ

ジャンル:コメディ、ロードムービー

感想と見解

タイトルの「大災難」は日本語タイトルであり、原題は「Planes, Trains and Automobiles。Planes(飛行機)、Trains(列車)、Automobiles(自動車)の3つの乗り物の意味。しかし、この「大災難」はこの作品を表すのにピッタリだと思います。感謝祭の前日、主人公の広告会社勤務のニール(スティーブ・マーチン)はクライアント先の会議が終わらず自宅へ帰るための飛行機の搭乗時刻が迫るのを気にしている。やっと解放されて外へ出てみれば道は大渋滞、タクシー待ちの列も大行列。空いているタクシーを見つけ走って捕まえようとすると、同じくタクシーを狙っている男性が。ってこの男性がケヴィン・ベーコン(その後同じくジョン・ヒューズ監督「結婚の条件」で主演を務める)が!結局タクシー争奪戦の勝利を収めたのはケヴィン・ベーコンでニールはがっくり。そこでちょうどタクシーを止めた人にお金でタクシーを譲って貰うことに。しかし、金額の交渉をしている最中に他の人がタクシーに乗って行ってしまった。ニールはタクシーまで走って追いつき後部座席の客と顔を合わす。その人物はこれからの旅を共にすることになるデル(ジョン・キャンディ)だった。なんとか空港に着くも飛行機が遅れている。空港で時間を潰していると目の前にさっきのタクシーを盗んだ男が・・・。ここから2人の災難続きの旅が本格的に始まっていくというストーリー。

 

この作品は30年以上前に公開されましたが(私がまだ1歳の頃)、描かれている人物描写は今観ても共感できる部分が非常に多いです。ニールのキャラクターは、時間を無駄にするのが嫌・他人とは極力距離を置きたい・自分にストレスがかかることはなるべく避けたいというような現代人に多く見られる特徴を現しています。(私自身耳が痛い・・・。)そんなニールにとって他人の不手際により自分の計画を台無しにされてしまうことは恐らく最もストレスが溜まることだといえるでしょう。しかし最初はイライラしても表には出さず心の中に留めて穏便に努めます。それが今後経験する数々の災難と正反対の性格を持つデルとの出会いによって変化していく様がとても面白いです。どうしてついてない時ってこんなに次々と災難が降りかかるんだろうということたまにあるじゃないですか・・・。さすがに最初はなんとか作り笑顔で耐え抜いても、あまりにも運に見放された状況が続いて人格が変わっていってしまうニール。(というより普段隠していた部分が溢れ出てしまったのだろうと思えます。)暴言を吐いたり無茶な行動を起こしたり自暴自棄になる姿は観ていて「あ〜私も同じ目にあったらきっとこうなるだろうな・・・」と自分に置き換えた姿をつい思い浮かべながらもその滑稽さに笑えてきてしまいます。私の大好きなアキ・カウリスマキ監督の「街のあかり」や「浮き雲」も主人公に次から次と不幸がふりかかる話で、本当に絶望的すぎて逆に笑っちゃうという状況があってそこが面白いところ。チャップリンの「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」という名言はコメディの真髄だなぁと改めて感じます。困っているようなイラついてるような曖昧な笑顔から感情をむき出しにして滑稽な様も気にしなくなっていく変化をシームレスに演じるスティーブ・マーティンが素晴らしかった。

ニールとは正反対のデルは図々しいながらも明るく愉快な人柄。シャワーカーテン用リングのセールスマンというニッチすぎる仕事をしている。(儲かるのか?)無意識にではあるがタクシーを横取りしてしまったことの罪滅ぼしか、ニールの助けになろうと手をつくすも失敗続き。(無自覚に人をイラつかせることはあるけど根はとてもいい人。)トラブルにあいながらも、”風の吹くまま気の向くまま”といった寅さんのようなデルはニールからしてみたら悩みなんて1つもないお気楽人間に見える様子。ジョン・キャンディがデルというキャラクターの魅力を最大限に引き出しているのは明らかで、最初は図々しいしうるさいし面倒くさいけれども、持ち前の愛嬌や人の良さでなんだかんだ一緒にいたら楽しいし、いなければいないで物足りなさを感じるようなそんな存在を見事に演じています。だからこそ時折見せる何か言いたげな悲しげな表情が良いんですよね〜。

 

ジョン・ヒューズ映画では音楽に合わせて口パク&ダンスシーンはおなじみの定番シーンですが、今回もジョン・キャンディが車を運転しながらレイ・チャールズの「Mess Around」に合わせて口パクしたり、踊ったり、エアピアノやエアサックスを演奏するシーンがとても愉快で楽しい!!です。ニコニコしながらずっと観ていられます。ジョン・キャンディのコミカルな表情や動きがとにかく最高


Mess Around - Planes, Trains and Automobiles

この曲のタイトルの「Mess Around」は”時間を浪費する、ブラブラする””ふざける”という意味があり、まさにこの映画にピッタリな曲。そして、このシーンを観て私が真っ先に思い浮かべた映画があります。それが2017年日本でも公開され大ヒットしたベイビー・ドライバー」の冒頭シーン。 

かなりスタイリッシュな仕上がりで印象は変わってきますが、このシーンは絶対に「大災難 P.T.A」のオマージュだと思うんです。エドガー・ライト監督が影響を受けた映画1000本の中にも「大災難 P.T.A」は入っていますし。そして、「Mess Around」の後の高速逆走シーンも最高にばかばかしくておかしい!ジョン・ヒューズ作品でこれまたおなじみの大絶叫も本当に最高です!

他にも特にお気に入りのシーンはニールが車をレンタルしたものの指定の場所には車がなくなっていて、ついに怒りが頂点に達したニールがキレてしまうところ(その時に言う「神に見放された!」というセリフの時に口が開いたまま動いていない)や、その流れでレンタルカー店に文句を言いに行くが受付のおばはん(ジョン・ヒューズ作品常連のエディ・マックラーグ。最高。)が仕事中に思いっきり私用の電話をかけてるせいで待たされ、不満を爆発させたニールがFワードを連発させるところなどなど。あとはやっぱりラストですね。

謎なシーンもいくつかあって、モーテルで財布の中身を盗まれたことに気づいた後にレストランの前でニールとデルが会話しているシーン。デル「カードは残してる。何のカードがある?」ニール「VISAとガソリンカード、それからギフトカードだ」と言うんですが、モーテルにチェックインする時にダイナーズカード出しているんですよね(その時にデルのカードと入れ替わってはいるんですが)。もっと後になってからまたカードを出すシーンがあるんですけどそこでもダイナーズを出しています。それともう1つ。ニールがレンタルカー店を出た後タクシー乗り場で殴られ、デルに拾われた後のシーンのニールの声が明らかに変なんです。まるでヘリウムガスを吸ったかのような声。何かを吸ったとかそのような描写は特になく。殴られた衝撃?とても気になります。

(※ここから下、オチに触れています)

最後には家まで行く電車に無事に辿り着き、2人はそこで別れを迎えます。観ているこっちも寂しい気分になってきますが、そこからの展開が本当に泣けてくる。1度は電車に乗り自宅へと向かったニールは、今回の災難続きの旅を思い出しながらあることに気がつき引き返します。そこでやっとデルの笑顔や止まらないお喋りは悲しみや孤独を隠すマスクのような役割だったのだと観ている私たちは気づかされるのです。知り合いも多くユーモラスで人との距離感が近いデルのような人間が、最愛の妻を亡くし家族はおらず帰る家もない。かたや神経質で一人を好むニールは家に帰れば妻や子供達が暖かく迎え入れてくれる。見た目や雰囲気で勝手にその人のイメージを押し付けてしまいがちだけど、お互いに深く知り合わなければ分からないことがたくさんあるのだと教えてくれたのだと思います。ここからデルとニール家の家族同然の付き合いが始まるといいなぁという期待が膨らむラストでとても嬉しい締めくくりでした。ジョン・ヒューズもジョン・キャンディも現在はもういないということがとても悲しいけど、だからこそこれからも是非多くの方に観て欲しい作品です。「大災難P.T.A.」のジョン・キャンディが気に入ったなら「おじさんに気をつけろ!」もとてもおすすめです。